土壌は固相(土の粒子)、液相(水)、気相(空気)の3つの部分からなり、液相と気相はそれぞれに土壌全体の約30%(合計で約60% )を占めます。植物の根はこの気相の大気中に存在する酸素と液相の水の中に溶けている酸素を吸収して活動しています。土壌から根に取り込まれた酸素は細胞内のミトコンドリアに運ばれ、“呼吸”と呼ばれる一連の化学反応を介して根の活動を支えるエネルギー(ATP)を合成するために使われています。
しかし、圃場の地表面が湛水状態になると、土壌の空隙が水で満たされ気相が消滅します。流れのない停滞した水に含まれている限られた酸素は、植物自身の根や土壌動物/微生物によって使われ、根はすぐさま酸欠状態になります。
酸素不足に陥った根は呼吸ができず、不足したエネルギーを補うため “解糖系”(糖を分解してエネルギーに変換する代謝反応)に過分に依存することになります。解糖系は呼吸に較べるとエネルギー生産効率が格段に低く、光合成によって生成したエネルギー源である糖を過剰に浪費していきます。こうして徐々にエネルギーを失った根はミネラルなどの養分を土壌から吸収するのに必要なエネルギーさえ確保できなくなります。さらに大量の水に囲まれているにもかかわらず、水分の吸収力さえも低下します。こうしてエネルギー枯渇した根は根腐れ(細胞死)を起こすことになるのです。