冠水・湿害

冠水・湿害

水は植物にとってなくてはならないものであり、不足すると生育が阻害されます。しかし逆に、水が多過ぎるときも植物にとって有害となる場合があります。 昨今の異常気象では圃場に大量の雨が降り注ぐ機会が多くなりました。圃場の地下に粘土層があったり硬盤が存在する場合は、土壌の透水性が低下して水引きが悪くなり地表面に湛水ができます。また圃場が周囲より低い位置にある場合などは圃場全体が冠水します。

こういった場合、作物(の根)は長時間停滞した水に浸かることになります。すると根腐れや葉の黄化とともに生育不良を起こし、酷い場合は枯死します。

湿害の原因

停滞した水に浸かると湿害が起こる原因は何なのでしょうか? 水耕栽培では根は水にずっと浸かりっぱなしであるにもかかわらず何も弊害が起きないところを見ると原因は水ではなさそうです。実は、根への酸素供給が不足することが湿害の原因であると考えられています。

酸欠が湿害の根本的な原因

土壌は固相(土の粒子)、液相(水)、気相(空気)の3つの部分からなり、液相と気相はそれぞれに土壌全体の約30%(合計で約60% )を占めます。植物の根はこの気相の大気中に存在する酸素と液相の水の中に溶けている酸素を吸収して活動しています。土壌から根に取り込まれた酸素は細胞内のミトコンドリアに運ばれ、“呼吸”と呼ばれる一連の化学反応を介して根の活動を支えるエネルギー(ATP)を合成するために使われています。

しかし、圃場の地表面が湛水状態になると、土壌の空隙が水で満たされ気相が消滅します。流れのない停滞した水に含まれている限られた酸素は、植物自身の根や土壌動物/微生物によって使われ、根はすぐさま酸欠状態になります。

酸素不足に陥った根は呼吸ができず、不足したエネルギーを補うため “解糖系”(糖を分解してエネルギーに変換する代謝反応)に過分に依存することになります。解糖系は呼吸に較べるとエネルギー生産効率が格段に低く、光合成によって生成したエネルギー源である糖を過剰に浪費していきます。こうして徐々にエネルギーを失った根はミネラルなどの養分を土壌から吸収するのに必要なエネルギーさえ確保できなくなります。さらに大量の水に囲まれているにもかかわらず、水分の吸収力さえも低下します。こうしてエネルギー枯渇した根は根腐れ(細胞死)を起こすことになるのです。

水が引いた後も困難が待ち受ける

水が引くまでなんとか耐え忍んだとしても植物にはさらなる困難が待ち受けています。水に沈んでいた組織が再び空気に触れると、酸化ストレスを受けて大量の活性酸素が発生し細胞を傷つけます。植物は活性酸素を除去する酵素や抗酸化物質を作って対抗します。

また水・養分が不足して弱っている植物体は傷んだ組織の老化を早めて取り除き、気孔を閉じてさらなる水分減少を抑制しながら回復に努めるのです。

湿害への対策

一番の対策はやはり湛水状態を作らないように圃場の排水性を良くしておくことです。

近年は大型の農業機械の使用により土壌が固くなり硬盤が形成されている圃場も増えてきました。硬盤は停滞水の原因となるので、破砕して透水性を改善することが大切です。台風などの大雨に備えて、明渠や暗渠を設置して圃場に水の排水路を構築するのも効果的です。

また畝を立てることで、湛水時の水位より少しでも作物の位置を高くすることも有効な対策です。

湛水状態に置かれた植物は幾重にも及ぶストレスに晒されます。酸欠に始まるエネルギー枯渇、水・養分の吸収低下、水面下での病害虫への感染リスクの上昇、水引き後の酸化ストレスなどなど。これらの湿害ストレスへの抵抗性をつけるバイオスティミュラント資材を以下にご紹介します。

ファイト・オーツー

酵母由来のアミノ酸とキトサンオリゴ糖が植物本来の持つ免疫抵抗性を刺激。攻撃を受けたと勘違いした植物は自らの遺伝子に働きかけて、茎の太い頑強な植物体を作ります。

マリンインパクト

商品説明

北極近海で夏冬を通して60度近くの寒暖差を生き抜く海藻アスコフィラムを原料とするバイオスティミュラント資材マリンインパクト。植物体の水・養分の流れを助ける浸透圧調整物質や酸化ストレスを抑制する抗酸化物質など、環境ストレス耐性成分が湿害ストレスから植物を守ります。

使用法・価格

どんな作物にも使用でき、葉面散布でも土壌散布でも使えます。2~3週ごとの継続的な散布がベストですが、ストレスが予想される時期に予防のために使っていただくのも効果的です。防除の時に合わせて混用散布も可能です。10アール当たり100~200ml (約400円~)のご使用が目安です。

試験結果

グリーンステム

商品説明

植物由来の成分グリシンベタインが植物細胞の浸透圧を調節し、冠水の過酷な環境においても溶質濃度を調節することで水・養分の流動を助けて植物を守ります。

使用法・価格

果樹、野菜など幅広くお使いいただけます。2~3週間間隔で葉面散布または土壌灌注します。10アール当たり200~500gの使用で、約2,000円~のお値段です。

ファイト・オーツー

商品説明

酵母由来のアミノ酸とキトサンオリゴ糖が植物本来の持つ免疫抵抗性を刺激。自らの遺伝子に働きかけて、根部の充実した茎の太い頑強な植物体を作ります。耐病性もアップし、冠水ストレスに耐えられるように準備します。

使用法・価格

水稲、果菜類、葉菜類など、どんな作物にも葉面散布(1000倍)にてご使用いただけます。定植時の苗のどぶづけもオススメです。7~10日おきに数回の散布が効果的です。10アールあたり800円程度のお値段です。

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